2013年春に放送されたシシド・カフカ出演のグリコ プリッツのCMを覚えている人も多いのではないだろうか。完璧な黒髪のストレートヘアを振り乱しながらドラムを叩き、歌う映像は、コマーシャル映像としてインパクトを残しただけでなく、彼女の強烈な個性までも映し出していた。最近ではソニーウォークマンの新CM「LOVE MUSIC」篇に出演したことでも話題になったシシド・カフカ。パンク、ロカビリー、テクノ、ヒップホップ、レゲエ、トランスというあらゆる音楽ジャンルを体現した集団のラストを飾るその存在感は、まさに主役級だ。他とは一線を画す独特のオーラはどこから生まれるのだろう。彼女の音楽とアーティストとしてのルーツ、生い立ち、ファッションまでが、シシド・カフカ本人の口から語られる。
――第一印象としてカフカさんはカッコよくてクール。そう言われることが多いですか?
ありがとうございます。やっぱりドラム叩きながら歌っているとこともあって、強そうなイメージだとか、カワイイよりはカッコいいというイメージがあるんだと思います。カッコいいと言われるのは嬉しいですね。カッコいいと思われたいっていうのが昔からあるので。
――お名前の由来を聞いてもいいですか?
カフカっていうのが、チェコ語で「コクマルガラス」っていう烏の一種なんですね。コピーライターの方につけてい頂いた名前なんですけど。私がいつも黒服ばかり着ているし。なんとなく、性格やイメージが烏っぽいところがあったみたいです。
――自分で気に入っていますか?
そうですね。いくつか案があった中でもしっくりきましたね。
――最近の活動のことを聞きたいのですが、1月29日には新しいシングルをリリースされますね。
4枚目のシングルなんですが、初めての両A面で。1曲が「我が儘」という曲でロッカバラードです。アルバムを9月に出していて、その中にはミディアムバラードなども入っていたんですが、リードトラックとしてバラード系を出すのは初めてで、今までの曲調とは少し違います。また新たな一面を見ていただけるのではないかと。もう1曲は「Miss.ミスミー」っていう曲なんですけど、これはもうライブで盛り上がれそうな私らしいロックな曲で。この2曲のうち、「我が儘」はNHKの『花咲くあした』というドラマの主題歌に採用していただきました。
――カフカさんらしい、他にはない「ドラムボーカル」という新しいスタイルがどのようにして生まれたのかを教えてください。
もともとずっとドラムだけを叩いていたんです。色々と音楽活動していく中で、現在のプロデューサー陣ふたりに出会って「歌を歌ってみないか」と言われて。
で、歌を歌い始めて、色々話がまとまりだして、名前も決まって……シシド・カフカとしての武器はなんだろうねという話になった時に出たのが、「やっぱりドラムが叩けるんだから、ドラム叩きながら歌えば?」っていうのがお酒の席の笑い話だったんですよね。「絶対そんな辛いこと無理ですから!やりたくないですよ(笑)」くらいの話だったんですけど。
でも最近は見ないスタイルでしたし、ノーばかり言っていたもしょうがないので、一回やってみるかとやり始めて。それでライブで音を出してみた瞬間に、「あっこれだ!」ってチーム全体がしっくりきたんですね。そこからブラッシュアップして今の形になりました。
――ドラムを最初に叩き始めたのはいつですか?
ドラマーになろうと決めたのが10歳のときで。小学校4年生でした。そして叩き始めたのが14の時です。
でも、歌を歌い始めて少ししてから一回ドラム叩くの止めちゃいました。歌だけに集中しないと、歌が本当に成長しないなと思って。そういう時期が何年かありました。
――それは、デビュー前のこと?
そうですね。デビューが決まってその前の準備段階の時代に。シシド・カフカという名前が決まって、プロデューサーたちから、ドラム叩きながら歌えよっていう話が出たときにも、「もう何年も叩いてないから厳しいと思います。無理ですよ」と一旦はお断りしたんですけどね。
――そんなブランクがあったとは信じられません。
そうですか? ドラムボーカルというスタイルでやってみようかってなって話になって、たった3ヵ月後にライブをブッキングしてしまって。この短期間の練習で30分のステージがこなせるようになるのが(デビューの)最低条件で。その日のライブは散々だったんですけど(笑)。テクニカルな問題や体力的な問題もありつつ……。いろいろ課題はあったんですけど、全員がこれはイケるなってしっくりきて、そこからまた死ぬ気で練習するっていう。
――チャレンジとそこからの努力の積み重ねで、今のスタイルが確立されているわけですね。
そうですね。本当に今、がむしゃらですからね。
――話は変わりますが、カフカさんは国外で子供時代を過ごされていますよね。
生まれがメキシコで、2歳までの3年間そこに。それから東京で、中学校の1、2年がアルゼンチンなんです。そこからはずっと東京です。
――ではドラムを叩き始めたのは、アルゼンチンで?
東京での小学生時代にドラマーを志して、アルゼンチンでドラムを叩き始めました。アルゼンチンで時間を持て余していたこともあったんですけど、東京に戻ってからもドラムは継続しました。
小学4年生くらいの時って、なんとなく学校での自分の立ち位置がわかってくる年頃じゃないですか。すごく目立ちたいんだけど、その器が自分にないぞって気づき始めて。それで裏方に回ったら、それもそれで楽しいなって感じたんですけど、一方で、裏方をやっているこの私の姿を誰か見てくれないかなと「やっぱり目立ちたい」っていう気持ちがどこかにあって。
4年生の時に姉の影響で音楽番組を見ていて、どのバンドかは忘れちゃったんですけど、1曲が放送される中で、ドラムの人が1回も映らなかったんですね。ステージに上がっているけど、映らない。ライブだったらスポットライトが当たらない、テレビだったら画面に出てこないっていう、すごく絶妙な地味さが、その私の「目立ちたいけど、目立てない。けど誰か見てほしい」という願望を上手に叶える楽器のような気がして、「これだ。決めた!ドラマーになろう」ってその時に思いました。
――ドラムって音楽にはなくてはならない、重要なポジションでもありますよね。
そうですよね。その楽しさは後から分かるようになってきました。演奏で人と合わせるようになって、「ドラマーが変わればバンドのサウンドが変わる」という言葉を自分でも肌で感じるようになってきて、この掌握している感ってなかなかいいなって(笑)。そのドキドキだとかで、どんどん病み付きになっていった感じはありますね。
――最初に演奏していたジャンルってどういうものだったのですか?
アルゼンチンで叩き始めているので、基本的なスティックの持ち方を習ったり、ビートを習った後はタンゴから始めました。タンゴから始まってジャズにいって、ボサノバだとかそういうラテン系の音楽とか、フォークロアや民族的なリズムにいった後に、最後にロックでしたね。ロックをやっているうちに、普通に知っている感じだし、これって私の肌に合う気がするって思いました。
――初めてがタンゴですか! 日本で学ぶのとは違う導入ができたのかもしれないですよね。
そうですね。まず、基本的に学ぶリズムにタンゴってなかなか選ばないと思うんで。日本にいたら。本当に貴重な体験だったな。
――今の音楽のスタイルに育った環境が影響していると感じますか?
自分であまり感じたことはないけれど、人から言われることはあります。音を合わせている瞬間に、「やっぱりラテンの血が入ってるんだね」とか、ステージでもやっぱりラテンの国の情熱を感じました!とか言われることはあって、やっぱり多少なりとも空気すって水を飲んだだけあって、そういう意味で“ラテンの血”は混ざっているのかとは思いますけど。
――その“ラテンの血”は、ファッションにも影響があるのかなと思いますが、普段はどういうファッションをすることが多いですか。
そうですね。今、すごく自分のファッションが変わってきている時で。昔はずっと同じ服着てたんですよ。お金がなかくて、服買うよりスティック買おうっていう時期もありましたし。最近は、その日の気分や自分をどう高めるかっていうことを意識して服を選んでますね。今日はこういう風に気を引き締めたいから、とか、力を抜きたいから緩めの服を着ていこうとか。自分の中でこういう事をするからこういう格好っていう風に、ちょっとずつシーンに合わせて分け始めています。
――例えばスタジオに入ってレコーディングとか練習とかだと?
汚れてもいい格好ですかね。パンツスタイルで、緩くて。それと後、大事なのは腕が振り上げやすいこと。
――普段はワンピースなども着ますか?
最近は。もうちょっと女であることを楽しもうと思って。ハイヒールとかスカートとかも積極的に買っています。
――演奏の時は動きやすさが大事なんですね。では今日は大事な人に会うミーティングの時などは?
黒を着ていきます。自分が一番好きだっていうのもあるし、第一印象があるから。自分を強くしてくれる色なので。昔は自分を隠すために、見てほしくない、どこかに紛れないかなと思って黒を着ていた時期が長かったんですけど、だんだん自分のことを強くしてくれる色だっていうように変わって、やっぱり勝負時は黒を選ぶようにしています。
――実はFashion Pressで、3.1フィリップリムのパーティでスナップさせてもらったことがあるんですよ。
あの時も真っ黒でしたよね、私(笑)。パーティに出るのは慣れてなくて、所在無くてお酒ばっかり飲んでたんですよ。
――気さくな方だと思いました。
たぶん酔っぱらってたんです(笑)。
――3.1フィリップリムもお好きだと思うんですが、いくつか好きなブランドを挙げていただけますか?
トラマンド、コラグロッポ、リミフゥ、ワイズも好きですし、あとエンフォルドとか。そのあたりですかね、すごくよく着ているのは。この6ブランドばかり着ています。
――トラマンドは、すごく昔から愛用されているんですよね。ブランドとの出会いを教えてください。
ライブの衣装を探していて、すごく沢山のお店を渡り歩いているときに、アッシュ・ペー・フランスのお店に入って、あの子(と、一着のドレスを取り出す)を見たんですよ。なんだこの素敵な洋服は!と思って、触っただけでも、もう……。でもお値段もお値段なので、これはさすがに買えないなと思ってその日は帰っちゃったんですけど、翌日になっても忘れられないんですよ。ライブ衣装だし、気張らなきゃいけないし、何度も着るものだし。ライブ後も私服できればいいし、一生モノだと思えばいいと思って、奮発して最初に買ったのが、この一着です。かなりいっぱい着ているので、ゴールドが褪せてきちゃっているんですけど。
それこそ、これを買ったばかりの時は、勝負の時はいつもこれを着ていました。しかも、この飾りを後ろにして着たり、首にかけたりして何通りも着方があるんですよ。それがトラマンドとの最初の出会いですね。そこから気になっちゃってしょうがなくて。
後でアルゼンチンのブランドだと聞いて、よけいに「運命だ!」と感じましたね。「あら、アルゼンチン」って(笑)。なかなか行ったことがある人も少ない場所で、縁を感じる人はそうそういないでしょうから。これは、何かるんじゃないかなと思って。
買えない時もありましたけど、毎シーズン出る度にお店を覗いて、ショップの人に「好きです‼」ってアピールして帰るっていうのをやってました(笑)。とりあえず、見るだけは見たいっていう。
――プリッツのCMの衣装もトラマンドなんですよね?
そうなんです。CMも広告ビジュアルの方も。ついに共演することができたんです。
――今、着ているのは、新作のコレクション?
2014年春夏コレクションです。新作は普段着るものとテレビやライブで着る用とどちらもチェックしています。
色使いもそうなんですけど、これまで黒ばかり着ていたんですが、チャレンジなんですよ。ポイントになるし。そういうチャレンジを自然とさせてくれる。あまり背伸びしすぎず、自分らしく、でもちょっと気持ちを上げてくれる、そういう作用やきっかけをくれるブランドなんですよね。出会ったきっかけも含め、今までの歩みも含め、なにかにつけてトラマンドは近くにいるんです。
Profile : シシド・カフカ
6月23日生まれ。身長175cm。出身地メキシコ。好きなアーティストは山口百恵。メキシコで生まれ、中学時代をアルゼンチンで過ごし、14歳でドラムを叩き始め、18歳でプロに。数々のバンドでドラマーとして活動後、ドラムボーカルのスタイルになり、2012年5月16日に「デイドリームライダー」で配信デビュー。2012年9月19日「愛する覚悟」でCDデビュー。2013年2月20日セカンドシングル「music」を発売。2013年5月22日テレビ朝日系木曜ドラマ『ダブルス~二人の刑事』のオープニング曲にも起用されたサードシングル「キケンなふたり」を発売。2013年9月4日ファーストフルアルバム「カフカナイズ」を発売し、東名阪のワンマンツアーも。2013年2月から江崎グリコ「PRETZ」TVCMに出演。4月からフジテレビ系列「新堂本兄弟」にドラマーとして、ニッポン放送「オールナイトニッポンZERO」、bayfm「土曜の夜にはカラスが鳴く」にレギュラー出演中。モデル、女優としても活動し、2013年10月からはSONY WALKMANのメインキャラクターにもなり益々活動の場を広げている今注目のアーティスト。2014年1月29日4thシングル「我が儘/Miss.ミスミー」を発売。
http://shishido-kavka.com/
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